Steins;Gate感想(ネタバレ含)

■ストーリー

 99%の科学と1%のファンタジーという宣伝文句通りのリアリティ。あくまでリアリティ。
 このリアリティがこの作品の面白みを最大に引き出しているんじゃないかと思います。
 現実に起きた事件や存在している理論、聞き覚えのある単語等を巧みに引用した上で
 恐らく首都近郊に住んでいるオタクには馴染み深いであろう秋葉原の町をゲーム内にリアルに再現。
 その為か、リアルとゲームの境目がすごく希薄になってどっぷり世界観に浸れてその世界に没頭できます。
 
 特に自分はSF系の小説(本当の意味での)はあんまり読んだことがないので
 聞き覚えのある単語はどんどん調べて出来る限り理解して、そしてまたゲームを進めてというプレイスタイルだったせいか
 ゲーム内の世界と自分がリンクしやすくなっており、またこのゲームのリアリティを引き上げていた気がしました。
 
 また、このリアリティにこだわったつくりのせいか
 所謂「そんなやつぁー、いねえよwwww」的な非常に濃いキャラクターがいかにも自然に舞台に溶け込んでいて
 違和感よりも物語のリアリティを引き出す方向にプラスの効果を出しているように思えます。
 舞台が舞台でその舞台に対してまたあえて濃い設定を乗せることでその台詞回しやしゃべり方がさも必然であるように思えてくるといいますか。
 無理にキャラを作ってる感じがしなくなって、キャラに対する抵抗感がなくなってくるんですよね。
 
 最後にストーリーのテンポの良さ、惹き付け方が秀逸だったのではないかと思います。
 最初に思いっきり大きな伏線や疑問を置いたせいで最後がどんなふうになるのか気になるストーリー構成や演出に
 止まることなくどんどん進みつつも、決して説得力が不足せず、くどくないストーリー展開は
 ストーリーの先の展開を想像、期待させて時間がたつのを忘れる程ゲームにのめり込ませてくれました。
 
 この、徹底的にストーリーを重視して、それを活かすために作られた

  ・リアリティを帯びたストーリー
  ・随所にちりばめられた膨大数の伏線
  ・小気味良いストーリー進行
  ・ストーリーを背景にした違和感のない魅力的なキャラクター

 といった要素がこのゲームの最大の魅力だったのではないかな、と思います。
  

■個人的キャラクターランキング(と心に残った台詞)

 
1位.岡部倫太郎(鳳凰院凶真)
 本タイトル中最強の萌えキャラと言わざるを得ません。
 ただの厨二病キャラクターと思っていたら、ストーリーを追うごとにその本当の姿が見えてきて「実は……」というタイプ。*1
 でも、彼はヒーローや天才といったものではなくあくまで「一般人」。どこにでもいる多分普通の人より仲間思いで我儘で非日常にあこがれるだけの一般人。
 だからこそ、親近感を覚えてあれだけ魅力的に映ったんだと思います。
 
 その一般人がボロボロになりながらも世界という神にも等しい存在に挑んでいくあの姿。否が応でも感情移入してしまいます。
 そして、世界を相手取って勝利を収めた最後の最後のあの瞬間、狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真を演じようとしていたあのシーン。
 確かに世界の支配構造を変えて、混沌へ進むという「鳳凰院凶真」としての願いは叶えられたけど
 それは岡部倫太郎が本当に欲しかったものなのかどうなのか……って考えると本当に泣けてきて
 その後のあのEDとあの演出、そしてあのエピローグだったので本当にクリア直後は脱力して放心状態でした。
 これも全部岡部倫太郎という魅力あるキャラクターのせいで未だかつて無いくらい感情移入しちゃったからなんだろうなと思います。
  

  「我が名は―鳳凰院凶真。知らないなら覚えておけ。フェニックスの鳳凰に、院、そして凶悪なる真実で、鳳凰院凶真だ……!」
  「それが運命石の扉シュタインズゲート−の選択だ」
  「"最初のお前"を騙せ。世界を、騙せ」
           「お前が経験したわずか3週間の"世界線漂流"を、否定してはいけない。 "なかったこと"にしてはいけない」
 
   
2位.牧瀬紅莉栖
 最強のツンデレヒロイン
 まゆりを助けようと必死でもがくオカリンを助けた名サポーター。
 オカリンの中の本質に惹かれたのか徐々に徐々に心を開いていく過程は本当に良かった。
 そしてオカリンが収束する世界線に絶望していたあの時のやりとりは忘れられません。
 何も言わずに信じて、助けてくれたあの姿はうまく言葉にはできませんが、まゆり並みにグッとくるものがあり
 オカリンの心をまゆりとはまた別の形で察して助けてくれるあの姿は凄く魅力的でした。
 人によっては「出会ってからたった数週間で別に恰好いいところも見せてるわけではないのに」という方もいらっしゃるかもしれませんが
 最後の紅莉栖の言葉を都合のいい解釈の仕方をするのであれば
 色んな世界線、色んな時間で必死に頑張るオカリンを一番近くで見てきた彼女が惹かれてもしょうがないと思いますし
 また、そうであって欲しいと願わずにはいられません。
 

  「相対性理論って、とてもロマンチックで――とても切ないものだね……。」
  「やっと会えた。あなたをずっと捜していました。私、一言、お礼が言いたくて。どうしても、あなたに会いたくて」
  「いや、だから私はクリスティーナでも助手でもないと言っとろうが!」
   
  
2位.椎名まゆり
 最強のアホの子。
 オカリンが鳳凰院凶真である理由であり、その原因を作ったキャラクター。
 初見は完璧な不思議キャラで頭の悪いちゃらんぽらんなアホの子かと思いきや実はそうではない最強のアホの子。
 オカリンを包んで癒すあの姿はまさにオカリンだけの聖母。
 「因果律のメルト」のラストシーンて鳳凰院凶真として振舞っていたオカリンに対するあの言葉は本当に泣けました。
 
 個人的にこのタイトルのヒロインは彼女と紅莉栖の2人両方だと思います。
 どちらが欠けても物語は成立しないし、正直「透明のスターダスト」、「因果律のメルト」どちらに流れてもオカリンの心を考えると仕方なく思えます。
 それだけの説得力がこのストーリーの過程には存在していたと思います。
 どちらに転んでもそれだけの理由があるし、ストーリー的に矛盾が出るわけじゃない。
 そういう意味でこのゲームのヒロインは椎名まゆりと牧瀬紅莉栖の2人だと思っています。
 

  「トゥットゥルー♪まゆしぃだよ」
  「まゆしぃはオカリンの人質だから、ここにいようと思いまーす」
  「オカリンはね、オカリンのために、泣いてもいいんだからね?」
           「鳳凰院凶真はね、昔、まゆしぃのことも助けてくれたんだよ」
   
4位.橋田至
 最強のウィザード級スーパーハカー。
 ハードもソフトもいけるプログラムの知識に所謂世間からみたオタク像を全部詰め込んでみましたっ!!という強引なキャラ設定。
 関智一さんの名演もあって非常に味わい深いキャラクターでした。
 どこが良かったと言われると一番困りますが、とにかくあの見事なオタクっぽさに魅力を感じたように思います。
 Chap6で見せた全篇通じての唯一の父親としての姿が忘れられません。
 

  「ハカーじゃなくてハッカーだろ常考
  「え?誰が?僕が?お父さん?? 君の?」
  「ごちゃごちゃ細かいことはいいから、その女の子を助けることだけ考えればいいんじゃね? そうすれば、モテ期到来確定だし!」
 
  
4位.阿万音鈴羽
 最強のバイト戦士。
 chap6以降で正体をバラしてからの話の展開は見ていて胸が本当にスーッとしました。
 そして、そのスーッとして盛り上がりまくった後でのあの展開。
 あの絶望一色の手紙にはオカリン達と一緒に盛り上がっていた気持ちを本当にズーンとたたき落とされました。
 それを除けば、竹を割ったような、というんでしょうか。
 解りやすくて隠し事のできないあの性格は、見ていて気持良く普通のギャルゲなら多分一番好みなキャラでした。
 個人的に「不可逆のリブート」の結果がものすごく気になります。是非DLCか何かで販売してください。1000円までなら出します。
 

  「あたしは、ガキじゃない! 一人前の戦士だよ!」
  「それじゃ、35年後に会おうね。あ、君たちにとっては数時間後か。あはは」
  『さよなら』
 
 
6位.フェイリス・ニャンニャン
 最強の猫ミミメイド。
 あるゆる意味でオカリンに最も近いキャラクター。
 そのキャラクターが最後に見せた「秋葉留未穂」という顔は忘れられません。
 今までも書いてきましたがこのゲームはこういう二面性を持ったキャラが多くて、それが各キャラの魅力を更に高めてるんじゃないかなと思います。
 猫耳キャラで全く抵抗を感じなくなったキャラクターは初めてかもしれません。
 恐るべし、フェイリスマジック。
  

  「フェイリスは、フェイリスだからニャン」
  「凶真はね……私の王子様だよ」
  
 
7位.漆原るか
 最強の男の娘。
 というかどう見ても女の子です。本当にありがt
 まさかのこのキャラに対するフラグがオカリンに立っていたとは全然思いませんでしたが、それを知れば「女の子になりたかった理由」については滅茶苦茶納得です。
 オカリンに対してあれだけ従順で一生懸命だったあの姿は本当に健気でした。もっともこのタイトルで女の子っぽかったキャラかもしれませんね。
 ちなみに「背徳と再生のリンク」って世界線がα世界線のままだったんですよね。
 ということはあの後は結局オカリンも死んじゃうわけで……どちらに転んでも一番報われないキャラクターだった気がします。
 本当に可哀想に……。*2
 

  「朝目覚めたら、女の子になっていた、みたいな、そういうのがいいです……」
  「男に戻ったら……岡部さんへのこの気持ち、封印しなくちゃけないから……っ」
 
 
8位.桐生萌郁
 最強の指圧師。
 好きか嫌いかでいえばどちらでもないって程度の印象。
 メールはリアルにウザかったし、ラボメンになった理由も結局はオカリン達を利用しようとしていただけだったわけですが
 やっぱり、彼女は彼女でかわいそうだったっていうのが原因でしょうか。
 まあ、あの依存が全ての原因でそれは本人自身にあるんだから最悪と言えば最悪なんですが。
 個人的には「境界面上のシュタインズゲート」後の萌郁のストーリーを見てみたいです。
 

  『またメールするね。してもいいよね? イヤだって言ってもしちゃいま〜す♪ 萌郁』
 
  

■総評(?)

 綿密に練りこまれ、伏線の張り巡らされたストーリーと
 世界線の移動と時間軸の移動という2つのタイムトラベルを用いた話の作りは新鮮で「ギャルゲー」の域を超えてます。
 本当にこのタイトルは「ギャルゲー」というレベルじゃありません。
 いや、決してギャルゲーを馬鹿にしてるわけではなく、このゲームを「所詮ギャルゲーだろ?」とか思って手を出さない人には敢えてそう言わせて頂きたいと思います。*3
 まあ、「ギャルゲー」なんて最初から思わずに購入してた人も多数いると思いますが。私もその口ですし。
 とりあえず360を持っていて過去にノベル系のゲームやADVをプレイして面白いと感じたことのある人には是非やってみて欲しいです。
 「ギャルゲー」でも「泣きゲー」でもない*4、ADVの新たな(というより昔懐かしい)境地を味わえること請け合いです。
 
 

*1:鳳凰院凶真の始まりのエピソードは本当に泣けました……。

*2:オカリンに想いを伝えれて一緒になれただけで十分なのかもしれませんが

*3:ゲーム雑誌とかでは「ギャルゲー」として捉えられているのが大半なようですが

*4:結果として泣いてしまう場面は多かったんですが、個人的な印象として所謂鍵に代表されるあのテイストとは何かが違うという印象を持ちました